大阪大学 大学院生命機能研究科 個体機能学講座 初期胚発生研究室 |
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2004年3月 |
日本獣医畜産大学 獣医畜産学部獣医学科 卒業 |
【研究について】
マウス着床前胚発生過程では、受精卵からはじまり細胞分裂を繰り返して細胞数を増やしながら、異なる運命をたどる細胞が次々と生み出されます。最初の運命決定は16細胞期から桑実胚期にかけて起こり、内側に位置する細胞である内部細胞塊(ICM)と外側に位置し将来胎盤を形成する栄養外胚葉とに分かれます。第2の運命決定は胚盤胞期において起こり、ICMの細胞が将来胚体となるエピブラストと胎膜となる原始内胚葉とに分かれます。この過程は多能性因子(Nanog, Gata6, Sox2, Sox17)やHippoシグナルが重要な役割を果たしていることが知られています。初期胚の固定サンプルにおいて多能性因子やHippoシグナル因子群の発現を調べると、個々の細胞においてばらつきがあり不均一であることから、これらの因子の発現がダイナミックに変動している可能性が示唆されました。しかしながら、生きた胚におけるこれらの発現動態を正確に捉え、細胞の増殖、分化、移動または細胞死といった細胞運命決定機構におけるこれらの因子の発現動態の生物学的意義は明らかにされていません。そこで本研究では、多能性因子およびHippoシグナル関連因子Yap1のレポーターマウスを作製し、ライトシート顕微鏡を用いてマウス着床前胚において3Dのライブイメージングを行うことで、これらの因子の発現動態を明らかにすることを目的としています。各因子の発現動態と細胞運命決定との関係や、各遺伝子同士の発現動態との関係を明らかにすることによって、着床前胚の運命決定における各遺伝子の発現やシグナル伝達のダイナミクスの生物学的意義を明らかにすることを目指します。現在、各遺伝子の発現をモニターするためのレポーターマウスを作出し、コンフォーカル顕微鏡を用いたライブイメージングを行なっていますが、サンプルの厚みや深さに依存したシグナルの減衰や、長時間撮影による蛍光の退色や胚へのダメージなどの課題に直面しています。これらの問題を解決するために、ライトシート顕微鏡を用いてライブイメージングを行い、着床前胚の細胞運命決定過程における各因子の発現動態を正確に捉えることを目指します。
ライトシート顕微鏡を用いることで、生きた胚全体における各因子の発現動態を正確に捉えることを目指します。細胞の増殖や分化、移動、細胞死といったイベントと各因子の発現との関係や、各因子の発現動態同士の関係を明らかにします。これらの解析を通して、着床前胚における細胞動態と細胞運命制御因子の発現動態との相関を明らかにし、運命決定がなされる条件や、運命決定のタイミング制御機構を明らかにすることを目指します。ライトシート顕微鏡を用いて胚全体における各因子の発現動態を正確に捉えたのち、それらの遺伝子発現やシグナル伝達のダイナミクスの細胞運命決定過程における生物学的意義を明らかにしたいと考えています。とくに、生きた胚において運命決定が引き起こされるタイミングがどのように制御されているのか?といった細胞運命の時間制御機構についてはほとんど分かっていません。そこで、これらの因子の発現動態がどのように制御されて、運命決定を引き起こすタイミングを制御しているのか、その分子機構を解明したいと考えています。正確に時を刻みながら進行する胚発生の仕組みを明らかにすることを目指しています。
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