九州大学 薬学研究院 抗がん剤育薬共同研究部門 |
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1998年3月 |
鹿児島大学農学部 卒業 |
【研究について】
現在私たちの研究室では、臨床ですでに使用されている作用機序が未だ明らかとなっていない既存の抗がん剤をより詳しく解析し、制がん効果をより詳細に「知る」ことでさらなる制がん効果を得ることを目的とした「育薬」というアプローチで研究を進めています。外科学の教室や製薬会社との共同研究を通して、抗がん剤がなぜ効果を得ているのか、あるいはどのようなメカニズムで耐性化に繋がるのかについて研究を進めることで、抗がん剤補助化学療法の治療成績向上につながるような基礎研究を行っています。多くの化学療法が細胞周期を標的としたものであるため、細胞が増殖している環境において効果を得ることができます。しかしながら多くの研究者や私たちの研究室の研究成果において、細胞周期のDNA 複製期(S 期)を阻害して細胞の増殖を抑制するタイプの抗がん剤では、一部のがん細胞を老化様の細胞周期停止状態に陥らせるといった「抗がん剤治療誘導性老化」が報告されています。このようながん細胞の老化状態は、細胞周期を停止させているため細胞周期を標的とした抗がん剤に耐性になることが予想されます。また加齢による老化とは異なり、抗がん剤治療誘導性老化は再び細胞増殖を開始する可能性が示唆されており、またその際には悪性度を増した状態になるとの報告もなされています。
私たちは今後の研究において、東海ヒット賞で貸与していただけます顕微鏡用クリーンボックス PureBox Shiraito を活用したライブイメージングを駆使して、抗がん剤治療誘導性老化がどのように誘導されるのか、あるいは抗がん剤治療誘導性老化に陥った細胞がどのように細胞老化から脱出していくのかに関する分子メカニズムを研究して、まずは抗がん剤治療誘導性老化とはどういう状態なのかを「知る」ことを目的として研究を進めていきます。
抗がん剤治療誘導性老化の基礎研究を行うことでその分子メカニズムを明らかにした後には,その基礎研究の研究応用として,抗がん剤治療誘導性老化を制御することを考えています。抗がん剤治療誘導性老化へ移行のすることを阻害する,あるいは抗がん剤治療誘導性老化へ移行してしまったがん細胞を制御することができれば,抗がん剤耐性につながる状況を回避することができ,抗がん剤補助化学療法の治療成績向上につながるようなアプローチを提案できるのではないかと考えています。
【IRMAILについて】
IRMAILさんからのメールマガジンは学会の企業ブースで登録して以来、定期的に届けて頂いています。研究技術に関する情報や研究助成金に関する情報などを得る機会として活用させて頂いていました。今回このような研究助成を頂く機会を得ましたことは、研究の推進への大きな手助けになりますので大変感謝しております。
先生のより詳しい研究内容はこちらから
九州大学 薬学研究院 抗がん剤育薬共同研究部門